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- 賃貸借契約でサブリース契約とかマスターリース契約という言葉を耳にしますが、一体何のことですか?
実務上サブリース契約とマスターリース契約という言葉がごちゃ混ぜに使われているようですが、正式には両者の意味は違います。
まず、マスターリース契約とは賃貸物件のオーナーとサブリース会社(不動産会社・管理会社)との間で一括借り上げ契約(原賃貸借契約)を結ぶことを意味します。
また、サブリース契約とはマスターリース契約を締結したサブリース会社が、その物件を個々の入居者と結ぶ転貸借契約を意味します。
マスターリース契約はサブリース契約を前提としており、どちらか片方だけでは成り立たないため、この一連の流れをまとめて「サブリース」と呼ばれているようです。 マスターリース契約には主に「家賃固定型」と「実績連動型」という種類があります。
「家賃固定型」は転貸するサブリース物件の空室率に関わらず一定額の賃料がサブリース会社からオーナーに支払わるタイプで、オーナーにすれば空室リスクへの担保がなされるため安定した収入が見込めるメリットがありますが、物件価値が向上して家賃が上がってもオーナーの収入は変わりません。一方「実績連動型」はサブリース会社がオーナーへの支払額を空室状況に応じて変動させるタイプです。物件価値が向上して家賃が上がればオーナーの収入も上がりますが、空室リスクを背負うことになります。
主にマスターリースの説明になりましたが、賃貸物件のオーナーにしてみれば不動産経営にかかわる業務を委託しながら家賃収益を得るというメリットもありますが、賃貸借契約につきものの敷金や礼金は受け取れません。建物も修繕費はオーナー負担ですし、マスター契約内容の見直しもあったり、賃料支払の減額を申し受けることもあります。またサブリース会社から解約を求められることはあっても、オーナーからの解約はできません。
マスターリース契約も賃貸借契約ですから、民法第618条や借地借家法第28条に従わなければなりません。■民法618条
「期間を定めている賃貸借の場合、契約で当事者に解約をする権利を認めていなければ、契約期間中に解約を申し入れることはできないとされています」■借地借家法28条
「貸主からの解約の申入れには正当の事由があると認められる場合に限ってすることができる。」とされています。
この正当事由の有無は、
〇貸主と借主とが建物の使用を必要とする事情
〇建物の賃貸借に関する従前の経過
〇建物の利用状況や現況
〇これらを補充する要素としての財産上の給付の申出(いわゆる立退料の提供)
などが総合的に判断されるところです。■借地借家法30条
「このような正当事由を要することなく貸主から解約の申入れをすることができるといった特約は無効」とされます。
したがって、貸主から特定賃貸借契約を一方的に解約しようとする場合には、契約で貸主から解約する権利が認められていること、正当事由があることの2つの要件を満たす必要があります。 仮に契約で「いつでも解約できる」などと定められていたとしても、これは上記の2つの要件のうちの前者を満たしているに過ぎませんので、 争いとなったときは後者の要件である正当事由を満たしているかが問われることに注意が必要です。- 不動産の新聞折込チラシに書かれているDKやLDKはどのくらいの広さですか。
不動産公正取引協議会連合会が、「不動産の表示に関する公正競争規約、同施行規則」などで、DKやLDKの定義、その広さについて定めています。
(1) ダイニング・キッチン〔DK〕
「台所と食堂の機能が1室に併存している部屋をいい、住宅(マンションにあっては、住戸。)の居室(寝室)数に応じ、その用途に従って使用するために必要な広さ、形状及び機能を有するもの」としています。
(2) リビング・ダイニング・キッチン〔LDK〕
「居間と台所と食堂の機能が1室に併存する部屋をいい、住宅(マンションにあっては、住戸。)の居室(寝室)数に応じ、その用途に従って使用するために必要な広さ、形状及び機能を有するもの」としています。
(3) DK・LDKの広さ(畳数)の目安
同協議会が定めている指導基準では、以下のとおりです。 最低必要な広さ(畳数)の目安(下限)
居室(寝室)数 DK LDK
1部屋 4.5畳 8畳
2部屋以上 6畳以上 10畳以上
なお、一畳当たりの広さは、1.62平方メートル(各室の壁心面積を畳数で除した数値)以上としています。
また、建物が取引される際に、DK又はLDKの広さ、形状及び機能に関するあくまでも目安であって、基準として定めたものではない、とのことです。
※ 不動産公正取引協議会連合会とは、不動産広告の内容が正しいかどうかを審査・調査している不動産業界の自主規制団体です。
https://www.rftc.jp/koseikyosokiyaku/- 賃貸借契約書には貸主・借主・媒介不動産業者の署名押印のほか賃貸管理業者の名称も記載されていました。この賃貸管理業者は媒介不動産会社のように監督官庁に登録が義務付けられているのですか。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の全面施行(令和3年6月15 日)に伴い、賃貸住宅管理戸数(自己所有物件の管理を除く)200戸以上の賃貸管理業者は国土交通大臣への登録が義務付けられるようになりました。
登録は、5年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失います。
なお、媒介不動産業者が賃貸管理業を兼務している場合も多いようです。- 賃貸アパートのオーナーをしています。賃借人が2か月前から家賃を滞納しているので、督促のため玄関先から声掛けをしたのですが、応答はありません。賃借人の郵便受けは一杯になっていました。隣室の入居者に尋ねたところ、「ひと月ほど前から人の気配はなく、また、以前から借金の取り立て人らしい者を見た。」という返事でした。 これから、どうしたらいいでしょうか。
どうやら借金のせいで夜逃げをした、といったことだと思われます。
今の状況を放置すると、家賃滞納が続くとともに、その部屋を他の人に貸すこともできないことになります。そのため、次のような手順で住宅の明渡しのための作業などをしていくことになりますが、手続きなど専門知識が必要になりますので、まずは弁護士に相談されてはいかがでしょうか。1 行方不明の事実の把握など
入居者がその住宅に居住していない、という事実を立証する資料や材料を次のように集めます。
(1) 連帯保証人などへの確認
賃借人本人の携帯電話への架電や入居契約時などでの賃借人の連帯保証人もしくは保証人(がいれば)・緊急時の連絡先・家族・勤務先へ電話や郵便などによって借主の所在確認を行います。
急病で入院しているなどで連絡がつかないことなのか、あるいは、室内などで死亡しているか、それとも、夜逃げして行方不明なのか、といったことが確認できるでしょう。(2)現地における調査・確認
・「○○(借主)さん、至急連絡をしてください。貸主」、「連絡がなく、また、滞納が続く場合は、賃貸借契約を解除し、併せて借主の退去を求める法的措置を講じます。」といった内容を記した書面を入れた封筒を玄関ドアに貼り付け、その状態を撮影します。
※ 「滞納家賃(〇か月)を支払え。〇日以内に支払えなければ退去しろ」というような内容のはり紙をそのまま玄関ドアに張り付けることは違法(名誉棄損による損害賠償請求)とされる可能性が高いので、絶対にしないでください。
・メーターボックスにある水道、ガスメーターの数値や動いているかを確認し、併せて電気メーターの円盤が動いていないこと、電気のスマートメーター液晶パネルの数値に変化がないことを確認します。それぞれのメーターの数値の写真を撮影しておきます。
・郵便受けにチラシなどがはみ出していないか、を確認します。
・できれば、夜間に電灯が点いているかどうか、についても確認します。
こうして1週間から10日間ほど経過した後で、現地で以下の確認を行います。
・封筒はそのままか。
封筒が剥がされていれば、貸主による借主への意思、つまり、「滞納が続けば契約を解除します、そして住宅から退去してください」という意思が伝達された、という効果が生じます。
封筒がそのままの状態であれば、借主が住宅に居住していないことが推測できる証拠ともなるでしょう。撮影後に封筒を剥がしておきます。
・メーターの数値は前回のままか。
・前回と同様に封筒やメーター数値の写真を撮影します。
・郵便受けにも変化がないか、も確認します。
※ この段階で、室内荷物の搬出や鍵の交換は絶対にしてはいけません。こうした行為、つまり自力救済は禁止されていますし、刑法で罰せられることにもなります。また、借主への十分な説明や対応をすることなしに立ち入った場合には、プライバシーの侵害として損害賠償を請求されることもあり得ますので、注意が必要です。しかし、住宅への立ち入りについては、例外的に民法606条2項で定める保存行為(修繕など)は認められていますし、借主はこれに応ずる義務があります。
※ 連帯保証人や親族に対し、賃貸借契約の解除を求めることはできません。
※ 室内から悪臭などがする場合は、警察官にその旨を通報し、その指示を仰いだ方がいいでしょう。(3)調書の作成
借主が居住していない状況を記した書面(賃借人が住宅に不在であることを証する調書⇒建物明渡請求訴訟を提起するときの証拠書類の一つになります。)を作成します。2 家賃滞納と建物明渡請求訴訟提起への準備
(1)3か月分以上の家賃滞納
貸主側からの契約解除の要件としては、一定程度の家賃滞納という事実によって貸主と借主との間での信頼関係が破壊されている、という事実が必要になるのですが、それは3か月以上の家賃滞納と一般的にされています。(2)配達記録付内容証明郵便の送付
滞納家賃の支払請求と支払いがない場合の契約解除の予告及び法的措置を講ずる旨を内容とする配達記録付内容証明郵便を送付し、その配達証明書(不在)をもらいます。
これは、民法97条で、意思表示はその通知が相手方に到達した時からその効力を生じ、相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす、とされているからです。(3)連帯保証人への請求や家賃保証会社へ連絡をします。
連帯保証人に対して借主の家賃滞納の事実を書面により告げ、その支払いを催告します。
家賃保証会社に対しては、借主との連絡がつかないことや今後建物明渡訴訟を提起する旨を連絡します。
なお、連帯保証人の支払いや家賃保証会社からの立て替え払いがあったとしても、借主が家賃を滞納していたという事実は変わりませんので、信頼関係が破壊されているという事実は変わりません。
※ 一定の期間の家賃滞納があった場合には、家賃保証会社が賃借人に知らせず賃貸借契約の解除することができる旨の規定の特約がある場合があります。しかし、令和4年12月12日に最高裁が、消費者契約法10条に該当するから無効である、との判決をしていますので、こうした規定には注意しておくことが肝心です。
消費者契約法第10条
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。(4)訴状に添付する証拠書類の準備
以下の書類を準備します。
・不動産登記事項証明書
・賃貸借契約書
・訴状提出時における家賃滞納状況や金額
・内容証明郵便(写し)及び配達証明書
・1(3)で作成した調書 など3 建物明渡請求訴訟の提起
1で記したように、借主の承諾なしに住宅に立ち入ることや室内の荷物を搬出することは禁止されています。住宅を取り戻すためには、建物明渡請求訴訟を提起して、その裁判で勝訴し、その判決が確定してから、不動産を管轄する裁判所あて、住宅明渡しの強制執行を申し立てなければなりません。
そこで、訴状を作成し、手数料(請求金額によって額が変わります。請求額が100万円以下でしたら、10万円ごとに1000円となります。)とともに、郵便切手代(概ね5000~7000円、判決後余れば返還されます。)を裁判所の納付することになります。
裁判に当たっては、被告である借主に訴状が送達(郵送)されることが不可欠です。しかし、本件の場合、借主が行方不明となっていますから、郵送された訴状は受取りがなされないでしょう。こうした場合は、裁判所は公示送達という方法を取ります。この公示送達を円滑に進めるために、1(3)調書の作成のところで記した証拠書類を作成しておくと、裁判期間の短縮につながります。
※ 公示送達の具体的なフローは、裁判所のHPなどで確認できます。
なお、訴状には、建物の明渡しと併せて、滞納家賃の支払いを求める旨を明記しておくことも重要です。こうしておけば,強制執行の際に借主が残した財産を差し押さえ、これを売却することにより、滞納家賃の一部または全部を回収することができます。4 強制執行
(1)強制執行の申立て
建物明渡請求訴訟で勝訴判決を得たとしても、借主(占有者)が自主的に退去しないことがあります。
そこで、不動産所在地管轄裁判所に強制執行を申し立てることになります。
この場合、訴訟と同様に予納金(裁判所により金額は異なります)や郵便切手代が必要となります。
また、執行補助業者(運送業者、倉庫業者)や解錠業者を手配しておくことも必要です。この執行補助業者や解錠業者への費用は、債権者が負担することになります。(2)催告
強制執行は、まず催告といって、引き渡しの期限を定めて、占有者に住宅の明渡し(退去)を求めることからスタートします。
本件の場合には、占有者がいないことやおそらく施錠されていると思われることから、まず、解錠業者が玄関ドアを開け、それから執行官が室内に立ち入って公示書(多くは1か月を経過する日を明渡期限とする書面)を貼り、催告書を差し置くのですが、併せて、貸主は執行補助業者と断行時における室内残置物(家財道具など)の搬出等に係る費用を内容とする打合せや見積をしていきます。
もし、住宅に借主以外の者がいた場合は、占有者と判断されることもありますので、執行官の判断によっては、新たな住宅明渡しの訴訟が必要になるかもしれません。
仮に、室内に価値のある残置物がほとんどないような場合には、即断行となることもあるので、債権者として催告に立ち会うことが重要です。(3)断行
催告書に記された強制執行当日に、執行官、債権者、執行補助業者、立会人(加えて解錠業者)が現地に集合し、室内に立ち入って、家財道具の搬出などを行います。
これは、債務者の家財道具などが存在していることは住宅を占有していることになるので、執行官がこの占有を排除して、債権者の住宅の占有を取得させる、ということです。
このような手続きを経ることによって、住宅が貸主に戻り、新たな賃貸借契約を交わすことができるのです。(4)動産(家財道具など)の処分
室内に残置されている家財道具などについては、財産的に価値がないものは廃棄処分に、それ以外は売却されることになりますが、高額なものを除き、多くの場合は即日売却され、それが債権者の収入となります。
執行官の指示に従って行動することが肝要です。5 その他の方法
明渡訴訟及びそれに引き続く強制執行以外に方法としては、連帯保証人や緊急時の連絡先として親族が届けられている場合にその者の協力を得ることにより、比較的短期間に処理することができる場合があります。ただし、連帯保証人や親族に対しては、賃貸借契約の解除を求めることはできませんし、その協力を得られないこともありますから、こうした交渉などについて弁護士に依頼することを考えた方がいいでしょう。
